2009年10月29日木曜日

銭函の家 断熱工事2

さて本日は、壁に二層目の断熱材を施工する準備をしてゆきます。具体的にいうと内部にさらに下地を作って壁を厚くしてゆきます。思えば断熱工事の長い現場です。外貼り断熱としてスタイロフォームを10cm、内部に移って一層目のGWが10cm、二層目がさらに10cmです。よく厚い断熱を意味がないとけなす人がいますが、世界的に見るとECOハウスの流れは機械設備依存から建築本体依存に移りつつあります。寿命が短く高価な機械設備に頼るよりも単純でめったに故障しない建築の壁や屋根に投資した方が賢明だという考えがずいぶんと浸透してきました。



さらに詳しく知りたい人は、尊敬するドイツ在住の環境ジャーナリスト村上敦さんのHPをお教えしましょう。  http://www.murakamiatsushi.de/




内部は現在この状態です。




一層目のグラスウールが見えます。下地を作って二層目を入れる準備です。

拡大すると、左から一層目グラスウール、補強用構造用合板、二層目用の下地となります。


外部に、きれいな道南杉の羽目板を貼ります。現場は杉のよい匂いで一杯です。

2009年10月28日水曜日

西岡の家 内装工事 追い込み!

西岡の家の内装工事も5日からの内覧会に向けて追い込みです。極限までローコストを追求しつつも職人たちの手の跡が残る建築をつくりたい。いつもそう思います。合言葉は「建築地産地消」みなさん頑張ってください!内覧会のご案内 http://ako-re.blogspot.com/2009_10_24_archive.html

壁のジョイントボードにパテ処理をしている様子。秋晴れと紅葉の中作業は進みます。

手摺子の脚部のディテール(細部)鉄はよく磨き上げられているか?でも角は十分に研磨されて鋭すぎないか、必ずFBフラットバー(鋼鉄製薄板)の場合、塗装前に設計者は触ります。握りやすさなら木部を握り棒としますが、吹抜けに重たい影響を与えないように今回は最小断面のFBを用いて手摺を作ります。

華奢な断面の手摺ほど、揺れ止めのためには2点止めが原則です。


寝室のヘッドボード側の壁は紙網代を用いて部屋に向き(指向性)を与えます。床の間の床奥や奥行きを強調したいときによく行ないます。角をRに落とすのも好きな意匠です。


朝日の差し込む「西岡の家」の居間。もう少しです。

2009年10月27日火曜日

西岡の家 家具製作状況

現在、旭川で製作中の「西岡の家」の家具たちです。私の好みはビジュアルもさることながら実用的に洗練されたものです。どんなに高価で美しくても、日本人の骨格に合わなかったり、疲れやすいものや、修理の利かない物はよくありません。残念ながらホームセンターではこうした家具がほとんどです。よいものがあっても法外に高かったりしてなかなかよいものが少ないのです。ご覧の家具はクライアントの好みと体型に合わせてデザイナーのNさんにリデザインしていただいたものです。そんな意味では、この世に6台しかない「西岡の家専用モデル」ですが、一生使えて、けっしてゴミになることはありません。こんなことを書くとみなさん「でもすっごく高いんじゃ?」なんてね(笑)しかし意外に安価なんです。みなさんもこの次のお休みには家具工場を訪ねてみてはいかがでしょう。

座面はペーパーベルトを編みこんだものを使います。耐久性が高く、クッション性も硬すぎず柔らかすぎず丁度よし、ペーパーコードのようにほつれも少なく、大好きな仕様です。写真は編み終わった座面をエアータッカーで座枠に止めつけているところ。


ナラのフレームをオイルフィニッシュしているところ。塗装は極力簡単にメンテナンスできるものがお勧めです。ウレタン塗装は輝きは見事ですが、塗膜が剥げてしまうと、もう一度全塗装する以外にありません。その点オイルならば紙やすりとぼろきれでいつでも新品に戻せます。

カーブした背と直線的なフレームの組み合わせ。北欧くさくなりすぎず日本的なものを感じます。


この脚もNさんのオリジナル。6人フルに掛けても椅子の脚と緩衝しづらいデザインです。


ニレの4cmの厚板4枚接ぎ(ハギ)、(札幌でこの価格帯だと5枚以上になりますが、材料の豊富な旭川では4枚程度が普通です。テーブルの巾は約80cmですから20cm以上の材料を使っています。仕上げは椅子と同じくオイルフィニッシュです。 ちなみにこの巾で2枚接ぎで天板を作れたらお宝です。一本の幹から巾40cm以上の板が取れる広葉樹は残念ながら北海道でもたいへん貴重だからです。

銭函の家 断熱工事(室内)

銭函の家の窓には全てガラスが入り、雨風をしのげるようになりました。断熱工事も外貼りから室内に切り替わり引き続き進行中です。しかしこれが難関。外側断熱としてスタイロフォームを100mm貼った後に内側から壁に200mmの断熱材を施工しますが、今までの写真でご覧になっている通り、銭函の家は大きな窓だらけ、さらに室内には間仕切壁が極端に少なく、3階建てで構造計算を要求され、おまけに通常より25%も大きな地震力に耐えねばならない(構造強度割増)というわけで、断熱しながら木造で許される最強の壁倍率(5倍)の壁で外周部分を補強せねばなりません。要は構造用合板で内と外から柱を挟むわけです。まあ文字にすると難しいので写真を見てください。


奥行き210mmの柱:グラスウールが200mm入ります。柱の外には、先日の45mm厚さのトリプルガラスが張り付いているのが見えます。

まず100mm入れたところ。柱の巾はあと100mm残っています。

100mm入れて内側から構造用合板を打ち付けて壁倍率を5倍まで上げます。
上部のスリーブはパッシブ換気の壁付け排気口です。

外壁の厚さは40cmを超えてしまうので、窓の下にはアルミの水切が入ります。水切の奥行きを見ても壁の厚さが分かっていただけると思います。これでも壁の厚さは、北海道の同業他社よりもかなり薄いほうなのです。

風の強い土地柄と、見上げたときに窓の上の通気層から木の胴縁が見えないようにイーブスベンツを組み込みます。

2009年10月24日土曜日

西岡の家 内覧会のご案内








「新築を超えるリフォーム」を目指して取り組んだ現場がまもなく竣功します。
北海道の材料とノウハウで作ったリフォーム住宅「西岡の家」の内覧会を行ないます。11/5(木)~11/8(日)の4日間に渡って行ないますのでぜひお越し下さい。

2009年10月22日木曜日

西岡の家 +現場につく間に

本日は、西岡の家に行く途中で素適なカフェを見つけました。

昔の建具を上手にアレンジしながら、楽しんでいるのが素適だと思わない?手作り感がまた気取らなくて、控えめで、えばった感じがないのがいいなあ~と思います。おそらくかなりのところが手作りのこういうカフェ、最近とても増えましたね~。嬉しいです。特に若い世代の人たちは僕らの頃と違って、インテリアや照明といった、建築的な感受性が高いように思います。毎日図面を引く私にとってこんなふうに建築を理解してくれる人たちが増えるのはとてもとても嬉しいのです。それが同業でなくてももちろんです。
インテリアが、建築家がつくるみたいに白くてすっきりしていないのがまた○!感激!!建築家が作るとこんな風に荷物や調度を入れると妙にきたなく見えます。ものを入れたり置いたりしたときに丁度よいくらいのさじ加減で内装を設計できるような建築家はごく少数です。でもそれがほんとうのマエストロなのよ!クライアントの家具や絵なんかが入ると、とたんに部屋がきたなく見えるようじゃお客に恥をかかせているような気がしない?そんな意味でこの絵はいい。生活の全てが見えているのに、写真を撮るとびしっとアングルが決まって絵になるでしょう?

スープは私には甘すぎたけれど、サンドイッチは美味しかったです。今は非常に珍しい赤ラワンのテーブルに無地の白い食器がとっても似合っていました。

民家を改造しているせいもあるのだろうが、茶色い木部が闇を作り出す。光大好き明るいのマニアの建築家とは反対に、だからこそむしろ光の大切さを感じる室内。暗いことはなにも悪いことではなくて落ち着きや、時代、歴史の流れなんていうものを連想させてくれる。現代の建材ではけして出すことの出来ない味わいを感じない?

本日の西岡の家、光に照らされると茶色が明るく変化します。
隠し格子を棟梁に作っていただきました。私は居間と玄関ホールの間に扉をほとんどつけません。でもどんなに小さな家でも、玄関を開けると居間が丸見えなんていうのは設計失格です。そこでいろいろ考えます。居間の食卓からは玄関戸が見えませんが、角度を変えると........

すーっと、玄関ホールの中に視線が通ります。こんな風にして空間を孤立させることなく、気になるところだけをどうにかする工夫をしています。

2009年10月21日水曜日

銭函の家 ガラス工事

本日はガラス工事です。サッシ工事とどこが違うのか?サッシは枠でガラスは枠の後ということになります。(笑)このガラス工事もたいへんです。北側に広がる美しい石狩湾の眺めを取り込みながら、高い断熱性能も両立せねばならず設計者としても実に頭の痛いところです。そこで最小限の部品でガラスを柱間に貼り付ける方法をとります。前回もお話した通り、サッシの枠はそのままだと大きな熱の逃げ道になります。ガラスをどんどん大きくしてゆくとむしろ熱の逃げ道となる枠自体がないほうが性能上は合理的になりますが、当然それには窓の専門家の高いスキルが要求されます。まさに地元の窓メーカー飯田さんの力の見せ所。特に担当者のWさんは、現場経験も豊富でキュートな女性です。数十枚に渡る、施工図を描き、私の無理な性能要求に答える開口部をデザインしていただきました。

トリプルガラスを柱の間にはめ込もうとしているところ。手前がWさん。3層ガラスともなると、この大きさで重量は125kgにもなります。運搬は当然人力。2階と3階まで男6人で運び上げます。

壁に立てかけたガラス。車のショールームなんかに比べたらたいしたことないけれど作業は見ていてかなり緊張感あります。
2枚のLOW-E(熱反射)ガラスに2層のアルゴンガス+普通ガラスで極限まで窓ガラスの断熱性能を高めます。この状態でK値は0.9W/㎡kくらい、厚さは4cmを超えます。


吹抜け部分にガラスを持ち上げているところ、大の男6人がかりです。

完成寸前の2階のガラススクリーン部分。
学生の頃、寒地住居論という授業で、「北国の住宅の開口部は熱の逃げ道だ」と教わりました。先生によっては、そんな土地柄なのだから窓などは極力小さくするのがよいとおっしゃる方もいました。しかしここ数年は、毎年窓のサイズが大きくなるばかりです。大きな開口部の気持ちよさに慣れるともう小さな窓には戻れません。「小さくすれば悩みもしないのに、大きくするから難しくなる。」なんていう人もいますが、まず性能が大切なのではなくて気持のよい自然さがあって、それを安全に実現させるために技術や性能が必要なのだと思います。カッコだけではかっこよくなく、性能のみでは味気ない。芸術でも科学でもないところに建築の奥深さと難しさを感じます。

2009年10月20日火曜日

銭函の家 サッシ工事

本日は雨、悪天候の中工事は進みます。みなさん足場の作業気をつけて!





本日は、サッシの搬入です。外部はアルミ、本体は木製の複合サッシですが、断熱性も特別に考えてあります。ガラスの性能UPのみでは限界があるので今回は、地元のサッシのメーカーである、飯田さんと議論を重ねた末、木製の断熱インサート枠を作っていただきました。

中央に見えるのが、断熱インサート、左側のアルミ枠が(外部)、右側が(内部/室内)になります。見ての通り、枠内部を熱が貫流する際に断熱材が抵抗する仕組みです。おそらく木製サッシでは世界初の二重枠スタイル。コラボレーションは様々な可能性を生み出してくれて、建築家として可能性を感じます。

ダブルスキンテラスドア、壁の厚さが40cm以上になるのを利用して、熱の逃げ道となるドア周りは、外開きと内開きを合体した作りになっています。
拡大するとこんな感じです。外戸と内戸が分かるでしょう?

西岡の家 造作工事

縦の押し縁が終了し、現在塗装中、しっかり仕上げの色を入れてゆきます。色が剥げたら素人でも簡単に塗れて何度でも新品並みに生まれ変わる外壁仕上げ、18mmの貫板を用いて定期的にメンテを行なえば50年以上、木の外壁は大丈夫。



本棚や作り付けの造作材等を加工しています。この時期になると各室の仕上げ各部の仕上げ等々の決め事をしっかり詰めておかねばなりません。
玄関の縦格子を加工しているところ。彫った溝は、材料の見付を小さく見せると同時にビス隠しに使います。材料はニレ、いいオイルを見つけたので拭きあげて木地のまま仕上げるつもりです。

吹抜けの上からだとこんな感じです。


この年代の家の特徴は階段が急で怖いこと。そこで段板の奥行きを4cm拡げ、蹴上げを3cmは低くしないと安心して降りられません。当時の平均では階段の段数は13段程度。これを15段にします。当然ながら段数も段板の寸法も増やすことで階段の全長は長くなります。反面、踊り場は狭くなってしまいます。そこで1階の窓の下枠の高さを踊り場の高さに揃え壁の厚み分踊り場を広げています。

読書家のご主人の本棚を吹抜けから見上げたところ。ランマのように空いた穴は1階に主人の気配をつたえ、昼間は吹抜けに溢れる光を天井越しに本棚の裏に導きます。中央の本棚に一つだけ空いた穴は、向かいの公園のプラタナスが中央に見えるように高さと場所を決めました。

2009年10月15日木曜日

西岡の家 家具探し

本日は旭川に出張です。11年ぶりに以前務めていた事務所で設計した家具の工場を訪ねました。社長さんには残念ながら会えませんでしたが、久しぶりに美しい家具たちを見て目の保養になりました。建物もよく手入れされていて古さを感じさせません。 旭川の近郊にある畑の真ん中に工場はあります。社長は会社の向の森の中に住んでいます。

打ち合わせロビーの様子


社長は第一級の職人です。創業当時からの愛用の道具達が展示してあります。


美しい家具たち。材料は、ナラ主体にタモ、ウオールナット、ビーチ、メイプル、セン、ニレ、チークetc、北海道で最も良質な家具の材料が集まります。肘掛のえぐりや、背板のカーブ、脚の肉抜き等々11年ぶりに見ても鳥肌が立ちます。一見札幌はいろんなものが集まるような気がするけど、家具と材なら上川盆地がやはり最高です。

2階のショールームより打ち合わせロビーを見下ろす。当時から好きなアングル。

美しいスツール。写真より本物は数倍機能的で美しい。座ると分かる。掛け心地は後ろに見える7チェアがかすみます。(笑)