2010年12月16日木曜日

なぜ?北側?段差?

菊水の家は積極的に段差を工夫して計画に盛り込んでいる。最近、「段差」などというと高齢化対応やバリアフリーの観点からか、はなはだ人気が薄い。むしろネガティブなもの、あると将来困るものとして扱われることが多い。反面、高齢化を遅らせ身体的な生活能力を長く保つためには、階段の上り下りや段差をまたぐ、体を半身にひねってドアをくぐるといった複雑な動作を暮らしの中にさりげなく安全な範囲で残すことも大切なことなのだ。そこで菊水の家は、いったんフラットな床を作りその上に置き床(段差)を設けている。理由は、言うまでもなく将来バリアフリーの必用な時が来れば簡単に床をフラットに戻せるように考えたからだ。住宅に大切なことに「今その機能を満たす」、ことと「将来その時が来ても困らないこと」の二つがある。近年は高齢化対応への反省から後者の考えが支配的である。でも最終的に高齢化するからと言って、段差を楽しめる時期を棒に振るのはいかがなものか?段差があることで高齢化を遅らせたり、空間が豊かになったり、たくさんの良いことがあることも事実なのだから。

手前が家の奥(客間や食堂に台所)、棟梁がいるところが居間。


家の奥には、階段を二段上がって行く。天井はフラットなので、奥に進んだ人間は天井だけが低くなる。菊水の家では「仕切らないこと」が計画のテーマ。つまり壁や建具で部屋を用途別に仕切ることをあえてしないで、どこまで気持ちの良い間取りができるか否かに挑戦している。

写真は北側のファサード(建物の正面)。道路が北入り(北側敷地)なので、居間の大きな窓は道路側に向きづらい。ともすれば水周りの小さな窓が不規則に並びやすい方角だ。そこで余計な窓や排気口、換気口を縦格子の中に隠し、窓の数を制限してすっきりとした外観のデザインを考えている。北海道の場合は特に南に大きな窓のニーズが高く、反面窓のない北面は貧相な表情になりやすい。それはそれでわるくもないし、一度は「いっそ北側は木の外壁の表情だけで窓なしか?」とも考えたが、子供の行き帰りや、街中にもかかわらず夜間は街路が暗い土地柄であることも考えて窓を整理しつつ北側の表情を考えた。南に大きく敷地が残り大きな窓を設けた「南あいの里の家」とは対照的な表情の理由がお分かりだろうか?