2012年1月30日月曜日

宮ノ丘の家 内覧会のご案内



ブログを通して現場の様子をお届けしてまいりました「宮ノ丘の家」の内覧会を行います。ぜひ当日はお誘い合わせの上ご来場いただければ幸いです。「雪と暮らす新たなライフスタイル」をテーマに、本州から移住を果たした若いご夫婦のために設計させていただきました。ぜひご覧下さい。

週末もサービス残業という方のために、土曜日は夜21:00まで見学可能です。 

「チーム宮ノ丘」  プロジェクトマネージャー   山本亜耕


「宮の丘の家」とは?

ポイント-1 「インテリアをもっと面白く!」
 2009年の「銭函の家」から開始した300mm断熱プロジェクトの第五弾になります。昨年の「西野の家」、「稚内プロジェクト」で、省エネの他にも断熱することで得られるさまざまな可能性があることが分かってきました。たとえば断熱のノウハウは室内のデザインに大きな関わりを持っています。特に「宮ノ丘の家」では壁と屋根をグラスウール30cm、40cm級の完全な外貼断熱とし、高い性能のまま、美しいカラ松の構造材や屋根垂木をすべて室内に露出させています。要は和室の真壁よろしく、家を支える柱や梁をすべて室内から眺めることができるのです。近年は大壁といって柱をすべて隠す方法がほとんどですが「宮ノ丘の家」はこの真壁と大壁を自由に使い分けながら簡素で気取らないインテリアを提案しようと考えました。

ポイント-2 「間取りをもっと面白く!」
 約半年にも及ぶ雪との暮らし、道産子の私たちはつい、毎日の除雪や寒さといったネガティブな側面で冬を捉えてしまいますよね?しかし日本の伝統的な都市の中には、そうした地域の気候や特色を生かした独特の間取りや建て方のスタイルが数多く存在します。一見、うなぎの寝床のような京都の町屋や白川郷の合掌作りはその好例ですし、たとえばおなじみのLDKスタイルの間取りは北海道でいち早く市民権を得ました。そこで「宮ノ丘の家」ではこうした北海道の地域性に着目し、新たな間取りの提案をしています。建築と一体になり二台分楽に停められるカーポートや半屋外化した物置に駐輪場(冬は除雪機置き場)、道路から一段高い敷地にアプローチするスロープの扱い。室内に入るとペレットストーブが赤々と燃える土間空間。もちろん土足で使えるとともに、蓄熱体として家全体に穏やかな室温環境を作り出します。

ポイント-3 「白樺とカラ松をもっと面白く!」
 白樺とカラ松、道産子ならおなじみの樹種ですが、白樺の家具や内装って見たことありますか?同様にカラ松の柱や梁って少ないですよね~?実はこの二つ、道内には豊富にありながらも今までほとんど使われてきませんでした。白樺はその独特の斑点模様が嫌われ、美しい木肌を持ちながらも値段の付かない時代が長く続いたからです。使われるとしてもそのほとんどが製紙用のチップとして新聞紙やトイレットペーパーに使われるのみ。カラ松も無垢のままでは暴れ松とあだ名されるほど狂いが大きく強度はありながらも建築用材には不向きとされてきました。今では積層化や集成化技術の進歩でこうした欠点はほとんど克服されています。そこで「宮ノ丘の家」では、この二つを積極的に用いることにしました。白樺は無垢のものを床材に、美しく作られた積層合板を建具の枠や階段、手摺、家具、そしておなじみのキッチンに用いています。

■データー

①:Q値   1.1W/㎡/k(自然換気0.35回/h札幌基準による)

②:C値   0.2cm2/㎡(建物完成時)

③:必用暖房容量  3.2kw(*:但し外気温-13℃、室温22℃の場合) 

④:断熱       フェノールフォームによる外貼り断熱
            壁:30cm、屋根:40cm相当(グラスウール24kg/m3換算)

⑤:換気      パッシブ換気

⑥:暖房      主暖房:ペレットストーブ、予備暖房:電気式パネルヒーター

⑦:給湯      電気温水器

⑧:断熱サッシ  スウェーデン製、国産
           (アルゴンガス入りLOW-E3層ガラス+樹脂スペーサー)

⑨:断熱材     フェノールフォーム(λ=0.019w/mk) 


*:建築主さまのご好意により会場をお借りしています。内覧会終了後はお引渡しが決まっておりますのでご見学の際には、ご配慮をいただければ幸いです。また会場は住宅街ですので車でご来場の際は、近隣の迷惑になりませぬようお願い申し上げます。



「チーム宮ノ丘」 紹介

■プロジェクトマネージメント(設計、監理)  山本亜耕建築設計事務所

■生   産(ゼネラルコンストラクター)   ㈱剛建築工房

■建築環境計画                 (有)タギ建築環境コンサルタント

■白樺フロアー                  物 林㈱

■白樺積層合板                 瀧澤ベニヤ㈱

■断熱材                      積水化学北海道㈱

■断熱サッシ                   ガデリウス株式会社

■遮熱ブラインド+断熱サッシ         ㈱エンヴェロップ

■ペレットストーブ及び道産ペレット     ㈱イワクラ

■オーダーキッチン              クリナップ㈱直需事業部

■構造材                     イワクラプレカットシステム㈱

今日はこんな感じで~やっぱ北海道でしょう!千春~っ!
http://www.youtube.com/watch?v=JulhX4skLI8&feature=related

2012年1月27日金曜日

恩師たちの最終講義

ところでみなさんの出身校はまだ残っていますか?私の卒業した北海道東海大学は、あと二年で閉校します。地方の疲弊や少子化の波を受けて北海道の大学にも規模縮小の波が押し寄せています。先日、かけがえのない恩師である、北島先生、大矢先生、粉川先生の最終講義に旭川に行きました。

 長い間、旭川の景観アドバイザーを務めた北島先生の講義、旭川市のシンボル橋である旭橋の再生と保存に積極的に取り組み、現在の橋の色はオリジナルに近いものに再現された。街並みや街路にも造詣が深く、研究の範囲は建築を越えて土木にまで及ぶ。「悩んだときは、それは本来、誰のものか?と問いなさい。」と教えてくれたことは一生忘れないと思います。

ドームと薄肉シェル構造の世界的権威である、粉川教授の可動式ラメラドームの模型。その他、地域の間伐材利用による、木製トラスはシンプルなジョイントの画期的なものでした。1986年の旭川ライブジャムのステージの上屋にこのトラスが掛けられ、その下でレイチャールズが歌ったことは最高の想い出です。いつも身の周りのものからインスピレーションを受けて、「あっ!」と驚くことを考える。そんな想像力を受け継ぎたいと思います。


最後は、自らに問いを投げかけた講義でした。

私たちの大学が画期的だったのは、教える先生の手によってキャンパスが作られていったことでしょう。当事基本計画を行った芸術工学研究館のスケッチを見ながら、大矢先生の最後の講義です。大矢先生とは、旭川の勤め人時代に、公営住宅の調査や再生マスタープランの仕事をご一緒しました。スケッチが抜群に上手でいまだにかないません。(笑)専門は意匠設計、建築計画でしたが課題のプランを出すたびに「へたくそだな~」と叱られていましたっけ?

最後には、お得意の歌で締めくくった大矢先生でした。



粉川先生の最新作、アイスシェルドーム。直径はなんと25mオーバー。「良質な雪と氷は最良の建材。特に旭川では寒くなればなるほど強度が増すしね~」と笑いながら見上げる空間の巨大なこと。びっくりです!スキー場や市内の酒蔵で既に実用化されていて、冬場に安価にできる仮設建物として道北エリアではかなりメジャーな存在です。

どうでしょう?この巨大な空間が雪と氷と温度でできるなんて驚きだと思いませんか?

今日はバッハでG線上のアリア。冬に似合いませんか?









2012年1月23日月曜日

宮ノ丘の家 ディテールその01

  今日は、「宮ノ丘の家」のディテール(細部)の確認です。上の写真は左から、木製サッシ(欧州赤松)、押縁(カラマツ)、柱(カラマツ)、下枠が白樺(積層合板)となります。下枠の角は打ち合せ通り優しく面取りがされ、オイルで拭きあげることでとても美しく仕上がります。                               

材種の色の違いはありますが、木目などは似ていて違和感の少ない納まりになります。

今回は室内の開口部と出隅をR処理しています。角を出さないことで枠を痛めにくく、見た目の印象もとてもやわらかくなります。

こちらは足元の巾木。カラマツ製で、壁から+2.5mmの巾で納まります。成(高さ)を抑えてあるので目に入りにくくスッキリ納まります。

壁から出る梁にはおなじみ、余長を見込んで柱にかぶせ気味に壁紙を貼ります。柱が収縮しても壁紙との間に隙間が出にくい配慮です。

最近はずいぶんと手に入りづらくなった古梁。I所長が大雪の中、栗山まで探しに行って見つけてきたものです。表面は鐇(チョウナ)で削られ、囲炉裏で長年燻された梁肌は黒く変色しています。汚れを落とし磨き上げて、また家の中心に据えました。

規則的な屋根の垂木との対比が印象的。全体を引いて眺めるとピシット角張っていても、細部や視線の集まるところに円や有機的な曲線があると、フッと力が抜けて、なんだか安心しませんか?

流し台の面材はステンレス製のクールな印象。さて組み上がりはまた次回のお楽しみ。

今日はインド!はまるよ~ http://www.youtube.com/watch?v=vxzxbc6a4Go


2012年1月21日土曜日

宮ノ丘の家 足場解体

 本日は「宮ノ丘の家」の足場解体の日です。雑木林の向こうに黒い木壁が姿を現しました。印象はたいへん控えめに周囲に溶け込む感じ。(笑)まあいわゆる地味系ビジュアルですよね~。敷地の周囲は雑木林が残り、緑が多い土地柄。こんな敷地にはさも、もとから建っていたような顔で街並みに参加してほしいと思います。

 ちょっと難しい言葉を使うと、「抑制を効かせたデザイン」を「宮ノ丘の家」のテーマとしました。ニセコの家でも試みた周辺との調和。もとからある街の空気感を壊さずにすんなり馴染ませようと、建物の形状を極力シンプルに、色彩計画では建て主さんと相談して時間の経過をイメージさせる黒に近いステインでペイントしました。「ニセコの家」のように壁の板の貼り方や、屋根の形も歴史性を連想させるものにすると、さらに地味度が増して目立ちづらくなります。(笑)

 建築家というと一見、奇抜で派手なイメージが付きまといますが、私の先輩建築家たちは、自己の主張を抑えた「溶け込みデザイン」の達人たちがたくさんいます。控えめでありながら、一旦室内に足を踏み入れると、流れるように配置された空間に目を奪われるという仕掛け。外見は抑えつつも緻密に計算された豊かな室内の存在感に影響されながら私も修行時代を過しました。最近やっと先輩たちの話の意味が少しだけ分かるようになりました。きっとものづくりは一生修行なのだと思います。(笑)
片流れの屋根のために北側は3階建てのボリュームになる。

壁の板を横張(南京下見板貼り)とし懐かしい緩めの切り妻(三角)屋根とした「ニセコの家」

玄関に入ると階段がお出迎え。

 階段から見上げると垂直な高さの中に今度は内側から見た三角屋根の形が見える。直線的に視線を吸い込む吹抜けの風景の中に、一見、自由に有機的な曲線を描きながら掛けられた古梁が、高さが持つ緊張感を和らげるという狙い。(2007年「ニセコの家)

派手じゃないけど大人の「定番」みたいな、息の長いデザインに憧れます。
建築も人間も簡単に色あせない耐久力がなくっちゃ~ねっ!

今日は21世紀少年も20世紀少年もどうぞご一緒にいかが?





2012年1月20日金曜日

宮ノ丘の家 内装工事02

カーポート部分を資材置き場と加工場にしながら内装工事を進める「宮ノ丘の家」。完成に向けて全員、気合が入ります。この時期になると電気屋さん左官屋さん大工さん塗装屋さん...等々、現場の人の出入りが激しくなります。上手に交通整理をして各人がぶつからないように気を配ります。
I所長の腕の見せ所。各工種を段取りよく指揮して現場を進めます。

 外壁から約2m跳ね出したテラスは、美しい手稲連峰の四季を楽しむためのもの。一見下にまったく支えがなくてアクロバティックに見えますが、そこはしっかり構造計算してあります。1m程度の奥行きだと計算は楽ですが、並んで山を眺める事にしか使えないテラスになってしまいます。しかし奥行きが2m程度あれば、友人と夏場のバーベキューや昼寝に読書、洗濯物干しに食材の乾燥、お魚の一夜干しなんかにも使えるようになります。

 こんなことを言うと誤解されるかも知れませんが、建物の良さというのは、断熱性と気密性だけで語れるものではありません。暮らしていて、癒されること。家の設え(しつらえ)のひとつひとつに愛情が感じられること。用意されている空間に内と外以外の半屋外を持っていること。特に最近ではこの半屋外の空間をいかに豊かに設計できるかにとても多くの時間を使っています。ブログを読んでくれる皆さんに伝えたいことは、どんなに性能がよくても内と外しかない家は味気がないということです。「西野の家」で試みたドックランや「春光の家」の中庭、冒頭のテラスのような、屋外なのに屋根や壁で囲われた空間は建築を面白くすると共に新たな「使い道」を生み出し、住まう人のアクティビティー(活動)を引き出します。たとえば「宮ノ丘の家」のような空中テラスが流行ってあちこちの家に当然のように設えられるようになったと想像してみてください。週末の友人や家族との焼肉が楽しみになりませんか?お互いにお呼ばれするのも悪くないですよね~(笑)、実際に北海道では短い夏場に敷地の中で、よく焼肉を楽しみますが、そのための場所ってあるでしょうか?気の毒なのは毎週家族が楽しみにしているのに、道路に面したガレージのシャッターを半下ろしにして煙で窒息しそうな室内でお肉を焼いている光景です。せっかく敷地が広く、夏場に皆で焼肉を楽しむ文化を持っているのだから、そのための場所を建築化したいと思うのです。建築家は眺めて美しい、絵になる空間を作りたがりますが、私はどちらかというと楽しく使える空間が好きです。その部屋で楽しく過す光景が想像できればできるほど豊かな気分に浸れるからです。

 北海道に憧れて、移住したクライアントのために室内は極力、北海道の材料を使おうと思いました。写真は穏やかな木目が美しい白樺のフローリング。生産者の㈱物林さんの里山シリーズは私もファンでよく使います。コストデザインを徹底して極力、地元のものを使いたいと思います。

今日はイランの曲なんていかが?

2012年1月15日日曜日

春光の家 気密測定

 本日は、「春光の家」の気密測定です。おなじみDr.タギと愛用の測定機器。もちろん写真の右上に見えるラッパは気密がC:0.5cm2/㎡以下の高性能建物専用に使う小口径のもの。気密性能を表すC値が0.5を下回るような建物は通常の大きなラッパでは正確な測定ができません。いつも機械の測定限界ぎりぎりまで挑戦してくるしたたかな設計者専用の仕様といえばお分かりいただけるでしょう。(笑)ちなみに2005年くらいまではC値は0.7程度で大満足でしたが、ドイツのパッシブハウスやスイスのミネルギーハウスを学ぶにつれ私の意識も大きく変わりました。弱点となる部分のチェックや対処の方法等々を考えるのにあてる時間は大幅に増え、内装工事を終えるまでに確認につぐ確認をお願いするようになりました。

 M職長の気合の入ったテーピングたいへんきれいな仕事です。柱とサッシ下地の取り合い、サッシと柱の取り合い等々、テープを丁寧に増し張りして厳重に気密化してあります。

 入り隅コーナーの難しい柱廻りの処理。色付きビニールを選ぶのは重ね部分の色が濃く見えて、後からの確認がしやすいため。また厚さは必ず厚手のものを使います。

 特に注意を要するサッシと下地の角部分。他の現場がコーキングの充填のみで済ますところを、さらにその上からテープを折り返して止めている。ビニールの重ね部分が濃く見えて、しっかりと重ね巾が取られていることが見て取れます。

 実はコーナー部分のガラス一枚の寸法が合わなかったために、一時的に仮の単ガラスを入れて検査に臨んだ。本日の外気温は-10℃。トリプルガラスと単なるガラス一枚の性能がどれほど違うかよく分かるビジュアルが撮れたのでぜひご覧下さい!

 左が単ガラスで右がトリプルガラス。それも「銭函の家」で初めて用いた最強のDr.タギ仕様です。ちなみに断熱性能は10cmのグラスウールとほぼ同じです。

 引いて見るとその差は歴然。建物の省エネを考えるうえで熱に対する意識が欠かせないことがお分かりだとおもいます。ちなみに日本ではマンションの窓はいまだに単ガラスを外部に用いて室内側に樹脂サッシを組む前時代的な二重サッシ仕様が一般的。本州などは一見洒落て見えても、サッシ自体一重が未だに一般的です。温度の出入りの激しい開口部に対する配慮がもう少し進むと省エネばかりか快適性がぐっと増すのですが。

 Dr.タギの読み上げる数値に真剣に聞き入るチーム旭川の面々。
注目の結果は当初C:0.6cm2/㎡で全員かなりがっかり。徹底的に気密を行ったにもかかわらず思うように数値が伸びないことに納得がいかないM職長、思わず腕組みです。その後Dr.タギ氏のアドバイスにより漏気部分を全員で探すこと30分。柱の根元とサッシの取り合い、テラス戸のパッキンからの漏気を発見。対処後の測定ではなんと一気にC値が0.3cm2/㎡にUP、Dr.タギ氏の「これ0.2楽に行くね~」のことばに全員ホッ!と一息、その後思わず拍手でした。(笑)
N所長の、「Mよくやった!」の一言で緊張していた職長の顔に笑顔が戻り、全員にとって嬉しい測定になりました。

その後の打ち合わせも深夜に及び、お腹も空いたので最終列車を待つまで駅前食堂「中野藩」で定食を。この定食、実は出張帰りのお父さんに列車を待つまでの間に気楽に使ってもらおうと、食事にお酒を一杯付けて、12年前のオープン当事店主と一緒に考えたメニュー。1000円と1500円のバージョンがあり、1500円の方にはお刺身も付く。12年後に自分が楽しみにするとはなんとも不思議な感じです。もちろん料理の味はたへん美味しいのでぜひ一度ご賞味を。

さて今日はチーム全員にこの曲を贈ります。
原曲はプリンス.オブ.デンマークマーチ、日本ではトランペットボランタリーとして有名ですね~。

http://www.youtube.com/watch?v=n1n7WeuHCog

北25条の家 内装工事01

ほぼ壁の石膏ボードを貼り終わり、天井に取り掛かった「北25条の家」です。

階段は蹴込板(ケコミイタ)を傾けた作りでシンプルながらしっかり25cmの踏面(フミズラ)を確保します。小走りに二階に上がるときも蹴込板につま先をぶつけづらくなる優しい階段です。

「北25条の家」の調理用熱源はガス。器具の位置を計りながらコックの位置を確認します。

I型キッチンのために壁際に混合栓の蛇口や調理器具の電源、給排水管が集中します。これも流しが搬入される前に忘れや勘違いがないか確認しておきます。

作業中の背中が居間から丸見えにならないように、また調理器具や食器の置き場として背面にパーテーション兼用の収納を作ります。写真はその下地。

ユーティリティーからは階段が見えます。

すっかりおなじみになったカウンター掘り込みの手摺です。

雪がやんで久しぶりの青空。
今日は松田聖子でも!

http://www.youtube.com/watch?v=jWZaAkU2Fp8

2012年1月12日木曜日

拝啓 カーサ.ブルータスさま

 
 以前お伝えした建築雑誌「カーサ.ブルータス」さんの取材。「銭函の家」が2月号に掲載されています。特集名は「スマートハウスは北の家に学べ!」なんて光栄なタイトルなんでしょう!!(笑)
みなさまぜひぜひ書店へ!友人の平賀さんや先輩の宮島さんともども載せていただきました。

カーサブルータスHP http://magazineworld.jp/casabrutus/143/

ただ~誌面には、誠に残念な間違いが1箇所ございまして。

この場を借りて訂正させていただきます。

P 047:誤「床下の40kwの熱源だけで~」

      正しくは「床下の3kwの熱源だけで~」 です。

理由は建物の面積の40坪を40kwと勘違いしましたとのこと。
「銭函の家」はそんなに燃費悪くありませんので悪しからずですう~。

はじめてブログをお読みの方に分かりやすく説明しますね~。

開拓移民の地、北海道では当初本州から持ち込んだ開放的な日本スタイルの住いが気候に合わずにたいへんな苦労をしました。その後特に、建物を通り抜ける熱に関する研究が盛んになり、大きな成果をあげます。2009年に完成した「銭函の家」は40坪の室内全て(畳80帖分の面積)を暖房するのに必要なエネルギーが3kw。つまりドライヤー3本程度で足ります。冬場の外気が-10℃を下回る地域であっても、こんな建物が今の北海道の技術でできますよ~。

という内容をお伝えするのが正解でした。

 読み飛ばした方はともかく、いったいどれくらい省燃費なんだ?と期待して誌面をお読みいただいた方々、また暖房のみで40kwもの大電力を消費する建物の前で笑顔で胸を張る私の姿にあきれた方々、北海道の人ってエネルギーの垂れ流しだよね~?と感じられた方々、それはまったくの誤解ですので、ぜひブログのバックナンバーをお読みいただければ幸いです。

銭函の家 
http://ako-re.blogspot.com/search/label/%E9%8A%AD%E5%87%BD%E3%81%AE%E5%AE%B6

 日本にはまだ建物をエネルギーの観点から捉える文化が十分ではないことを痛感します。校正時に正確な数値を伝えていたのに、ライターさんもその上司も数値の誤りにまったく気付かなかったとのことのようです。

 たとえばエコカー特集で肝心の燃費を一桁以上も間違うことなど珍しいでしょう。同じ数値でも燃費に関するそれは広く読者にとって社会化された常識だからです。「リッター3kmの驚くべき省燃費!」という記述を見ればほとんどの人がおかしい!とすぐさま気付くでしょう。しかし建築の場合は、もっと悲観的に考えねばなりません。多くの人が「やはり北海道の寒さは本物だ!この程度でも北海道ならきっと凄くECOな住いなんだろう~な?」とばかりに勘違いが悪化するからです。

でも実態はまったく違いますよ~。(笑)

 2009年以降、銭函の家も含め、私の設計した建物は、ほとんどが消費エネルギーの実測を行っています。最新のものでは、厳寒期の2月の電気量の合計(暖房+給湯+換気+調理+照明)が1.3万程度という家もあります。暖房面積は38坪です。

詳しくは http://ako-re.blogspot.com/2011/04/20110304_09.html

 この場をお借りして、取材にご協力いただいた方々、特に建て主さま、そして設計や建設に携わったたくさんの方々に心より訂正してお詫びいたします。申し訳ありませんでした。

 現在、編集者の方からは丁寧なお詫びと説明をいただいています。
残念な誤りとはいえ、北海道の建築事情をとりあげていただいてとても感謝しています。今後日本も、エネルギーの切り口で建築を捉える事が少しづつ増えてゆくでしょう。なんとなく俺流のECOからそれらの見える化や客観性が求められる時代に急速に変わってゆくと思います。またぜひ取材してください。がっかりなんてさせませんから!

まあ今日は残念~!と笑いながら「運命」でも!

http://www.youtube.com/watch?v=PTr1v1ksWkQ&feature=related

2012年1月11日水曜日

宮ノ丘の家 内装工事01

さて「宮ノ丘の家」も1/6より動き出しました。基本的な内装関連の発注が終了し、内装工事と外装工事を並行しながら行っています。現場に無線LAN内臓のノートPCを持ち込みインターネットの環境を維持しながら施工図のやり取りや、製品の発注を行う等、住宅の工事現場もずいぶんと様変わりいたしました。


リズミカルに屋根の垂木を支える束柱の階段状のリズム感とか、山の風景をパノラミックに室内に取り込む水平連続窓等、いつにもましてかなり盛りだくさんの構成ですが、室内が木質系の色だとあまり仰々しく見えません。このまま室内を白くするとかなり印象が変わりますが、今回は木質系の質感がお好みのクライアントさんの感性で気取らず大らかな骨組みの美しさをデザインしたいと思います。

断熱気密工事が完了した、宮ノ丘の家の室内温度は+15℃で湿度60%。外気が-5℃でこうした数値が出るところはやはり300mm断熱の余力を感じます。真冬に内装工事を行っても仕上がりは雪のない時分と変わりません。特にヒーターで室内を加温することもなく、建物本体でかなりの温度を作ってくれるために寒さから来る凍害の心配が少ないからです。以前は各階にジェットヒーターを置いて室内を採暖養生しながら内装工事を行いましたが、燃料をバカ食いするのと、焚いた燃料とほぼ同じ量の水分を室内に出すために窓が結露したり、その結露水が枠や腰壁を汚したりといった悩みが絶えませんでした。一見内装工事に関係のない断熱ですが実は、北国の通年施工に一役買う存在であることが現場をこなすうちに分かってきました。

外部は黒く塗られたとど松の貫板。貼り方はおなじみの縦押し縁貼りです。

壁の中に追い込まれた窓のディティール。下部の水切りは厚み0.8mmの鉄板。

今日は杏里でスノーフレークの街角なんていかが?


2012年1月9日月曜日

現場再開

最も早く現場を再開した「春光の家」、大工さんを増員し断熱工程に入りました。昨年の12月は徹底的に雪に泣かされた旭川ですが、年明けは今のところ穏やかな日が続いています。この間に一気に外部の断熱を終わらせ、内部工程に移行したいと思っています。

断熱サッシを担当するエンベロップによる美しいタモ材の玄関ドア。道内でも旭川地域はまだ比較的容易に地場産のタモ材が入手できます。札幌で玄関ドアをタモで作ろうとすると、ほとんどが輸入材のアッシュですが、旭川の場合は近海ものならぬ地域材もまだ豊富です。たとえば単に集成材というと、札幌では安い順にスプルス、カバ、ニレ、タモ、ナラとなり、材種を指定しますが(2012年現時)旭川なら「タモでいいかい~」の掛け声とともに普通にタモが出てきます。(笑)地域に材料と作り手が共存できる間は建築を安心してつくることができます。

9人大集合した大工さんたち、右の黒い帽子がK棟梁。大工さんの高齢化が進む中で注目の若手棟梁です。20代で会社を興し仲間と共にいろいろな難工事を納めて来ました。普段は5名で動きますが、大きな現場は増援をたのばねばなりません。彼の一声ですぐに人が集まるのはなにより人柄なのでしょう。

今日はジミ.ヘンなんていかがでしょう。