2012年3月25日日曜日

松橋常世展とキタコブシ賞

3/23(金)は尊敬する先輩建築家、松橋常世さんの個展に出かけました。ゼネコンの設計部を経て、建築家の倉本たつひこ氏に師事、その後独立しますが穏やかで洗練された松橋建築の空気感は静かで独特のものです。会場の「ギャラリー創」には札幌中の建築家が集まり個展の開催を祝いました。ぜひ皆さんもおでかけください。宇宙建築家、松橋常世に出会えますよ~(笑)

詳しくは:http://www.agson.jp/sou_blog/2012/03/_new_utopia_city_1.html

松橋さんと一緒に。

3/24(土)は(社)日本建築家協会北海道支部が贈る「キタコブシ賞」の表彰式と講演会がありました。「キタコブシ賞」とは、長年にわたり北海道の建築に貢献した人物に贈られる賞です。なんと4回目に当たる今回は尊敬する荒谷登先生(温熱環境学/北海道大学名誉教授)が受賞されました。私のブログでも何回かとりあげているように、北海道の建築手法は30年以上に渡る科学的なアプローチを作り手である建築家たちが共有し、実践の中で少しづつ身体化(自然にできるように身につけること)してきたところに大きな特徴があります。その結果、さほど詳しくない人にまで熱や湿気に対する基本的な設計法が浸透しているところに他地域との違いがあります。荒谷先生はまだ正しい作り方が知られていなかった寒地住宅の黎明期に徹底的な実践と実証によって建物の熱環境を解明した先駆者として、道内の専門家なら知らない人はいないでしょう。中でも1979年竣工の自邸は33年前の無暖房住宅ともいうべきもので、現在の家と比べても約1/4の燃費という驚くべきものです。一貫して科学者の務めを社会的であることに求めた姿勢は、結果的に多くのファンを獲得することになりました。

建物に当たる日射の熱量分布を手製の模型を手に語る荒谷先生。設計者なら目に見えない熱の振る舞いを身体的にイメージできるようになるまで実践を通して身につけるべし。大切なのは省エネではなく、エネルギーを生かす生エネルギーの発想に立ってものを作ること。省と生ではその意味において大きな隔たりがある。雪も寒さも実は欠点などではなく魅力的なエネルギーであるとともにかけがえのない長所である。欠点対応の発想ではなく、良さ発見型の発想で設計思想を磨くべし!
荒谷イズムにどっぷりと浸かる濃密な時間でした。

今日はピアノ!いいですよ~(笑)
http://www.youtube.com/watch?v=YDby2iGoT5g&feature=related

2012年3月22日木曜日

会議の後はカレーのSavoy

今日は、所属する日本建築家協会北海道支部の定例会議(通称:正副委員長会議)の日。支部長より、震災にも負けず、成功裏に閉幕したUIA東京大会(世界中から建築家の集まる世界大会で昨年は日本がホスト国)の報告と、来年に迫る日本建築家協会の札幌大会に対する準備の呼びかけがあった。

支部の環境部会の私もメモを取りながら話に聞き入る。各委員会、部会より報告がありその中で、職能委員より、施行目前の札幌市の次世代住宅基準のお話しも出た。この件に関してはちょくちょくブログでも触れているが、環境先進国であるドイツや北欧諸国の住宅基準と比較しても遜色のない水準の高いものだ、ついに行政も重い腰を上げた恰好だが、その背景には昨年の大震災の影響が大きい。エネルギーとそれを消費する機械設備に頼る従来の考え方とは異なり、建物本体を主体にした受動的(パッシブ)な熱環境の整備に重点を置いている。近年流行の太陽光発電や電気自動車を動力とするスマートハウスとは一線を画すが、今後が楽しみである。

帰りにはお気に入りのスープカレーの店、Savoyへサヴォイは10年来通い続ける名店だ。
料理なんて個人の好みというなかれ、ぜひご賞味いただきたい。味わい深いのにあっさりしていることに驚くと思う。一度食べたらけして忘れない。どこの店にも似ていない独特の味わいは、札幌名物スープカレーの老舗として恥じないもの。今年で開店18年目、商売で難しいのは続けること!私も肖りたいものである。


バジルの香るドレッシングは爽やかな後味。



サヴォイHP http://www.curry-savoy.com/

今日は大人なサヴォイの雰囲気で、ちなみにカレー以外ならベルギービール各種に自家製のピクルスがお勧め。メニューはどれも一球入魂です。
夜はジャズですよね~
http://www.youtube.com/watch?v=YKANToc0SeM&feature=related

2012年3月15日木曜日

卒業式にて

今日は長男の卒業式でした。
普段は着慣れない背広を着て、妻とは離れて私は来賓席へ。

校長とPTA会長の祝辞を聞き、卒業証書の授与。
あっという間の義務教育も終わり、もうすぐ高校生活が始まる長男。
いつの間にこんなに大きくなったっけ?

在校生と卒業生の合唱の頃には、不覚にもほろりと来そうになる。
思えばいろいろあったよね~。(笑)

おい息子よ、これからはいろいろ頼んだぜ~!

今日は、心から おめでとう!

やはり卒業式はこの曲!
http://www.youtube.com/watch?v=AHMDTO7sBv0&feature=related

卒業を迎える全ての子たちに贈ります。
http://www.youtube.com/watch?v=cAdpzhIQQbU&feature=fvst

2012年3月11日日曜日

春光の家 お引渡し




 2012年3月10日無事、「春光の家」のお引渡しが完了しました。

思えば2010年の10月から始まった「春光の家」の計画、1年5ヶ月の間にはさまざまな出来事がありました。学生から修行時代を過した旭川の仕事。初心にかえって精一杯努めようと思いましたが、実現までには素晴らしいクライアントさんをはじめ、たくさんの方々の知見や心からの協力が最大の原動力になりました。

 熱環境的には圧倒的に不利となる大規模な平屋でありながら建物の断熱や省エネルギーの計算を一手に引き受け、気密をはじめとする性能検証に尽力してくれたDr.タギ氏。

 一年で最も困難な季節にありながら、工夫に工夫を重ねて現場を切り盛りした㈱橋本川島コーポレーションのN所長、計画から着工までをサポートしてくれたT課長、積算課のMさん。外装の膨大な杉板貼りや手の込んだ意匠を受け持ち、最高の気密性能まで実現してくれたK棟梁とM職長。旭川大工の優れた技量を楽しみにしながら毎週現場に通うのがとても待ち遠しかったです。

 家中に光を溢れさせ、透明度の高い空間が自由に連続することを可能にしてくれた㈱エンヴェロッブのYさん。高い性能要求値に見事に答え最高のトリプルガラスのスクリーンで中庭を囲んでくれました。ほとんど全てガラス貼りにもかかわらず性能は一昔前の10cmのグラスウールと同じというスペシャルトリプルガラスには恐れ入りました。すっかりおなじみになった遮熱ブラインドも大活躍です。

 室内の造作家具の全てを担当した㈱匠工芸の二代目Kさんには、さまざまな難題を解決していただきました。クライアントが心から愛する地域ブランド「旭川家具」。中でも匠工芸のものは和の精神を現代的な美学で表現するデザインが多くのファンを生んでいます。割れをはじめとする木の欠点をむしろ積極的に技で美に変える姿勢は、簡素でありながらも、上質な作り手の良心を伝えています。今回も全ての家具には「匠」の焼印が入れられ同社の市販品を凌ぐ仕上げが施されています。

 屋根を担当した㈱プロテックのYさんと0勾配屋根を教えてくれた先輩建築家の小室さんなしではこの建物を特徴付ける塔屋の連続するアイディアは成立しませんでした。複雑な形状にマッチする信頼性の高い防水とそれが今までの北国が抱える屋根の問題点を大胆に解決してくれました。

 室内の汚染空気を回収しその熱でヒートポンプを稼動し暖房と給湯のお湯を造るという寒冷地向けのHPユニットを提案してくれたガデリウス㈱のKさん。今後のデーター取りが楽しみです。
 ガスと電気二つの調理の熱源を持ち、コの字型の洒落た製作キッチンを担当してくれたクリナップ㈱直需事業部のIさん。毎回ながら見事な出来栄えでした。通常の家の3倍の照明回路や間接照明を丁寧に仕上げていただいた㈱亀谷電設のK専務。初めての室内空気回収型のヒートポンプに取り組んでいただいた㈱アサダ設備工業のI部長。「チーム旭川」の全員にこの場をお借りして心より御礼申し上げます。また貴重な経験とチーム全員に素晴らしい仕事を与えていただきました建て主さま、ほんとうにありがとうございます。いただいた貴重な経験をもとにますます精進したいと存じます。
 

リビングから中庭の眺め

キッチンから食堂を見る。

ブラックチェリーの突板を用いた洗面化粧台の4点セット

洗面所の上部には専用の天窓が設けられている。

■データー(「春光の家」)

①:Q値   0.9W/㎡/k(機械換気0.3回/h)

②:C値   0.2cm2/㎡(建物完成時)

③:必用暖房容量  6.5kw(*:但し外気温-13℃、室温22℃の場合) 
             *但し暖房対象面積:248㎡/75坪

④:断熱       フェノールフォーム90mm外貼+GW24kg/m3
            壁:35cm、屋根:40cm相当(グラスウール24kg/m3換算)

⑤:換気      1種熱交換換気HP
⑥:暖房      土間下:低温水パイピンング、補助:電気式パネルヒーター
⑦:給湯      電気温水器(但しお風呂のみ)

今日の気分は映画のエンドロールですね~(笑い)
ご一緒にインデイーでもいかがでしょう。
http://www.youtube.com/watch?v=-bTpp8PQSog&feature=related




2012年3月8日木曜日

春光の家 が完成です

本日は、「春光の家」の完了検査。ERIさんを札幌から呼んで無事検査終了です。

次はおなじみDr.タギ氏による最終的な気密測定。結果はC値が0.2cm2/㎡と最高の結果になりました。M職長とN所長揃って安堵の笑顔がこぼれます。

現場もあと少しでお引渡し。長かった平成23年度の仕事がようやく終了します。


非常に明るい中庭の風景と隣の家の窓がどこにも見えない「俺の空」を切り取った居間の眺めです。

自分の家の中から自分の家の外壁を眺めるという貴重な?体験ができます。(笑)

中庭を囲む回廊の一部です。
今日はアラン ホールズワースでもいかがですか、彼のギターは最高ですよね~。憧れます!

2012年3月6日火曜日

建築ジャーナル

建築ジャーナルの2012年3月号に特集として掲載していただきました。
この場をお借りして御礼申し上げます。

 特集:「建物修復に力を入れろ!」の中で「西岡の家」の事例とともに建物の熱環境の大切さをお話させていただきました。ご興味のある方はぜひご覧下さい。

建築ジャーナルHP http://www.kj-web.or.jp/

震災以降、建物の基本的な要件を見直す必要を強く感じます。

 耐震性は予算の多寡にかかわらず、建築全てに求められる要件です。しかし今後は省エネとかCO2の削減とか環境負荷の低減を言うより前に建物本体(パッシブ)の熱環境の整備を大切にしてほしいと思います。その理由は前者が災害時の一瞬の力に耐えるための備えであるのに対して後者がその後必ず訪れるであろうエネルギー途絶に対する備えだからです。

 大切なのは、とりあえず建物さえ壊れなければ、エアコンやストーブに頼らなくても、熱中症や低体温症を免れる設計思想に今後は改めてゆく勇気を持つことだと思います。

 まだまだ社会的には、断熱性は寒さに対する欠点対応に位置づけられ、その地域の年間平均気温に対して最低限行えばよいとの認識が一般的でしょう。しかし普段からエネルギーを食う設備ではなく、むしろ建築を最大限(災害時にあわせて)設計する事を震災の教訓から学ぶべきだと思うのです。そうすれば平時は、やせ我慢せずとも大きな省エネが可能ですし、非常時には安全な避難所として役立ちます。こうした意識の改革は作り手である私たちが謙虚に今までの姿勢を反省し自ら正すべき事柄だと思います。

これからは耐震性とパッシブな熱環境!を
最新鋭のローテクで!   なんていかがですか?(笑)

今日はミッシェルブランチどうぞご一緒に!

http://www.youtube.com/watch?v=2aViAxK3SKU&feature=relmfu

2012年3月3日土曜日

ニセコの家

今週は久しぶりに「ニセコの家」へ行きました。

今年は各所で大雪が続いていますが、ニセコも凄い!
ほんとうに驚いたのはその量の凄まじさ。

南側は半分落ちた後に残りの上に激しく降り積もったのが分かります。


北側はこのボリュウム。凄いです。

今日はオリアンティー。相変わらずかっこいいです。


2012年3月1日木曜日

春光の家 内装工事03

 いよいよ大詰め!内装、最後の追い込みで現在床タイルを貼っています。中庭をガラスの回廊が囲む特徴的な空間。

 中庭の空には極力隣家の建物や屋根が入らないように検討した結果がこれ。敷地の周囲は建て込んだ住宅街ながら「俺の空」を獲得することができました。

私のインテリアは最近、和風のテイストが強いように思います。突き当たりの壁の色やテクスチュア(素材感)を変えることは床の間と床奥の関係に似ていますし、建具に突板以外の貼物を好むのも札幌の建築家の中では珍しいと思います。引き戸がドアよりも好きなところなんかも同じでしょう。


引き戸を開放した時に視線の突き当たりに責任を持つこと。小僧時代に師匠から教わった基本はとても大切なメソッドになっています。続きの部屋の奥にちらりと見える建具の柄をどのように扱うか?毎回ながら悩ましい問題です。(笑)

天窓に続く光チューブが中庭から離れた部屋も想像以上に明るくします。

今日は大好きなPacoなんて一緒にいかがでしょう?

提案、提案、また提案

すこしブログがおろそかになっていましたが。(笑)

相変わらず業務は忙しく幸せにこなしておりました。

この季節は毎週が提案(プレゼン)の嵐のシーズン。日々計画案に向き合う毎日です。

デザイン性と環境性能の両立を目指してスタートした300mm断熱プロジェクトも早3年が経過し合計7棟の建物が完成しました。その間に、環境的な意識はさらに高まり、昨年の東日本大震災では私たちの社会の在り様が厳しく問われる結果になりました。暮らしの中から排出されるCO2が全国最大級の北海道でも札幌市が独自の省エネ基準を策定し、環境先進国として知られるドイツとほとんど同じ水準の性能を建物に求めてゆくことになりました。

今日はDr.タギと秘密の作戦会議。
先日プランが固まった案件の各部の断熱構造を綿密に打合せします。

あまりに高水準の要求にたじろぎながらスケッチを進めるDR.タギ氏。(笑)