2016年6月11日土曜日

山の手の家 訪問点検



約10ヶ月ぶりに訪れた「山の手の家」。外壁の松板が味わい深く変色してきました。

さっそくご主人と奥様に昨シーズンの冬の様子や改修前の家との違いをお聞きしました。奥様曰く「たくさんありますけど家中が暖かく穏やかになって全ての部屋がいつでも使えるようになったこと。寒さというストレスがなくなったおかげで冬がぜんぜん嫌いじゃなくなりました。むしろ窓越しに降る雪がきれいだと思えるようになったり、2階のテラスのガラス屋根に積もった雪が日中に緩んで落ちるのを眺めたり、雨が降っても屋根を流れる雨水を下から眺めるのが好きです。もう散ってしまいましたがテラスの前のさくらんぼの花が満開になる頃は見ものです。」

「薪ストーブも家族に大好評で炎がある暮しが大好きになりました。家の前はけっこう車が通るので以前は音が気になりましたが断熱のせいか、もの凄く静かになったのにも驚きました。洗濯物がすぐに乾くのも大助かりです。」

きっとOBのクライアントさんたちはここまでの文章を読んで笑顔で「そうそう」とうなずいていると思います。でもなんだか私が伝えるといいことばかりで嘘っポ過ぎるかもしれません。(笑)
そんな人はまた別の機会に見学会を設けますからぜひお越し下さい。



施工を担当してくれた武田社長と残りの点検を済ませ。奥さまに「北海道の人でも断熱に投資することをまだ疑う人がいます。お二人にとって築12年の新しい建物を断熱改修せざるを得なかった。という体験はたいへん貴重なものだと思いますが、その経験をどうやって他の人に伝えたらいいと思いますか?」との問いに奥さまが見せてくれたのが上のノートでした。

改修前の「山の手の家」は3階建てで2階と3階が居住部分。1階は玄関以外、全てガレージと物置です。寝室群のある2階が32坪(64畳)、LDKと水廻りのある3階が18坪(36畳)合計50坪の大きな家です。しかし2~3階を全て暖めると光熱費が膨大になり過ぎるために3階のみ暖房、2階は必要が生じれば入れる。という状態。要は断熱不足ために50坪のうち18坪しか健全な室温が維持できない建物でした。

今回の大規模断熱改修で、3階を解体しLDKと水廻りは2階の32坪に集約しました。全体では18坪減りましたが逆に暖房面積は18坪から2階全部の32坪に拡大しました。

その前提で使用前、使用後を比べたのが奥様手書きの上のノートです。 赤文字が改修前の金額。(改修前は個別の灯油炊き給湯、暖房ボイラーだったので金額は灯油代金)それに対して鉛筆書きが改修後の金額です。(改修後は都市ガス熱源の暖房給湯一体型ボイラー)

●灯油VS都市ガス
2015年の12月は¥30,761(灯)→¥15,345(G) ▲¥15,416
2016年の 1月は¥57,591(灯)→¥17,973(G) ▲¥39,618
2016年の 2月は¥37,700(灯)→¥17,037(G) ▲¥20,663

●電気
2015年の12月は¥15,106(電)→¥ 8,661(電) ▲¥ 6,445
2016年の 1月は¥16,677(電)→¥11,230(電) ▲¥ 5,447
2016年の 2月は¥22,709(電)→¥ 8,340(電) ▲¥14,369

●水道
2015(11.12)¥15,460(水)→¥11,300(水) ▲¥ 4,160
2016( 1. 2)¥15,114(水)→¥11,300(水) ▲¥ 3,814

(灯油、ガス)、(電気)、(水道)の各カテゴリー全てで大幅に改善。まずはホッ!が出ました。こうした実測は意外や私たちのエネルギーから見た暮らしの動向を知る上でたいへん貴重な資料になります。詳しい分析は道内の大学の先生にお任せするとして、私でも分る範囲の説明を加えてゆきましょう。

まず灯油VSガスのグループですがこれはもう断熱による暖房の燃費改善がどれ程強烈かに尽きます。暖房する面積が以前より14坪(28畳)も増えたにもかかわらず12月~2月の延べ3ヶ月間で約7万6千円も節約できました。ちなみにこの価格の中にはガスコンロによる調理の分も含みます。(以前はIH調理器具でした。)

次は電気のグループですが、改修前が蛍光灯主体だったのに対して改修後はLEDにしたこと。もうひとつは調理を割高な電気からガスに変えたことが大きいと思われます。(改修前の電気代には日々のIH調理器具の分が含まれている、改修後はガスコンロに変えたのでその分が減っている。)

最後に水道グループです。このグループも結構な金額を節約することができました。でもこのブログをお読みになっている方々の中には首をかしげている方もいることでしょう、一般的には建物の高断熱化は暖房の節約には寄与すれど水道の使用量や給湯に関わる燃費には関係がないと考えるのが一般的だからです。しかし実態は少々違います。 断熱の貧弱な寒い室内では浴槽にためたお湯もすぐに冷えてしまいます。そのために頻繁に足し湯や追い炊きを繰り返さねばなりません。また浴室や水廻りを断熱しないことが多い温暖地の建物では特に高齢者のヒートショックを避けるために入浴前の数分間シャワー等で浴室の床や室内を温めることを勧めています。要は室内の寒さが原因で新たなお湯の需要や本来は浴室を暖める目的ではない給湯用の燃料を焚いてシャワーの温水で局所暖房をしているということになります。こうした状況に陥らざるを得なくなるのも断熱不足の建物の特徴なのです。 

ブログをお読みのみなさんには「断熱をしても給湯負荷は減らない!」なんて言う専門家にぜひ注意してほしいものです。(笑)

今日は星野源を女性ボーカルで