2018年1月26日金曜日

発寒の家Ⅱ 外張り断熱工事 その2


現在「発寒の家Ⅱ」では雪の合間を縫って外廻りの大工工事がほぼ終了を迎えつつあります。上は空気が抜けるように裏じゃくり加工された横(通気)胴縁。外装が縦ハゼ板金なので横胴縁が通気や雨水の抜けを邪魔しないように加工が必要になります。 
防風透湿シートの上から、横胴縁で外張り断熱材をパネルビスで固定して行きます。ビスの長さは、(横胴縁)18mm+(断熱材)100mm+(構造用合板)9mm+(必用突込み深さ)38mm≒165mmです。
 
屋外は-10℃と冷え込みましたが、室温は充分平和な状態。外張り断熱工法や付加断熱先行工法の利点は室内から寒さを除くまでの時間を短縮できること。要は外側に張った断熱材を防風透湿シートで覆うまでの時間をいかに短縮するかを重視します。
 
断熱工事はそれが外張りでも充填でも水濡れの危険を極力除かねばなりませんから外部の断熱材をいち早く水(主に雨)から守り、断熱性という仕事が出来るようにしてやることが第一優先なのです。経験豊富な管理者なら上棟後(たとえ屋根が出来ていても)、窓を付けたら軒先が充分深くても、一気に外部から断熱工事を進めます。たとえ外張りに使う断熱材が水に比較的強いと言われるポリスチレン系でも濡らすことは極力避けます。長い経験の中で初期含水率の高い断熱材がその後さまざまな悪さをすることが周知されているので、北海道ではたとえ工期が厳しくても、雨が完全に雪に変わる季節まで待って(我慢して)外張り断熱工事を始める現場もある程です。
 
こうして地元の方言で「外廻りを囲う」(外張り(付加)断熱にけりを付ける又は防風透湿シートを貼る)までを重視し、それが終わると安心してその日の天候と相談しながら、外仕事、内仕事を選べるようになります。
 
本日は内部の電気工事のために電気屋さんが入っています。
 
外張り断熱なので室内側からの充填100mmGWが付加断熱となり同様に室内側気密シートも不要ですから電気の配線がたいへん楽になります。管理者として大切なのは電気はFL+1000、設備はFL+600が基本というように最初から交通整理して壁内を使う業種同士が衝突しないようにルールを明解に示しておくことです。
 
こんな風に電気は黒マジックでFL+1000みたいに整理しておくと後のGW充填も楽になります。
 
電気屋さんはVVF線を通すためにドリルを多用しますから。一仕事終るたびに掃除を徹底します。外張り断熱の現場では室内側に気密&防湿シートがありません。現場のホコリはそのまま壁内に入りますから、こまめに掃除をしながら工事を続けます。
 
こちらは通気胴縁から打ったビスが間柱を外れた写真です。「抜いて打ち直せ」という管理者は素人です。通気層内は空気のみならず水も走りますから抜いた穴を元通りに戻せなければ、漏気&漏水経路を単に増やすだけなのです。本来は特に外張り断熱の場合ビスの打ち抜きは原則ご法度なのですが、万が一の場合はウレタンで防露処理します。
 
防露処理中のビスの写真が上です。抜かないことで止水性と気密性は保たれますが、ビスの頭は通気層に露出していますからビス自体は最高の熱橋になります。また外張り断熱はその特性上室内側に湿り空気の躯体内流入を阻む気密&防湿シートを持ちませんから仮にウレタン処理しなければ必ず壁の中でビスが結露します。
 
要は室内側からGWを充填する前に徹底的にビスの打ち抜きを見逃していないかどうか完璧なチェックが必要になるのも「外張り断熱+内側充填付加」工法の特徴です。
 
よく充填断熱工法の室内側防湿シート貼りを「手間だけ掛かってぜんぜん良さが分からない」と言う人がいますが、気密試験の結果を見ながら後から何度でも手直しが可能な室内側防湿シートとそもそもミスをほとんど許容しない外張り断熱工法ではその性格が大きく異なります。但し双方とも熟練した作り手であればそうした癖自体も別に問題になることはありません。大工さんってやっぱり凄い!(笑)
 
今日は凄腕のアクト工房の大工さんにP.ギルバートを贈ります。